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グローバルなエンジニアが新たな時代を切り拓く。HENNGE 開発マネージャーに聞く、ダイバーシティチームのつくり方
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グローバルなエンジニアが新たな時代を切り拓く。HENNGE 開発マネージャーに聞く、ダイバーシティチームのつくり方

金子 茉由
2022.10.26
この記事でわかること
社員の約20%が外国籍のメンバーのHENNGE株式会社。その経緯とは?
さまざまなバックグラウンドをもつメンバーを束ねるために取り組んだこと・意識したこととは?
エンジニアとしてグローバルな環境に身を置いてよかったと感じること

「テクノロジーの解放で世の中を変えていく。」という企業理念のもと、企業向けクラウドセキュリティサービスのSaaS認証基盤『HENNGE One』を開発するHENNGE(へんげ)株式会社。社名に表現されるとおり、「挑戦や変革に対する取り組みが凄まじい」とのうわさを聞きつけました。

社内の公用語が英語。日本生まれの企業でありながら、約20%が外国籍人材など、多様なメンバーが活躍できる組織づくりを進めているそうです。一体どのように文化や言語が違うメンバーと協業しているのか、Cloud Product Development Division(開発担当部署)のDeputy Division Managerである土居 俊也氏にお話を伺いました。

HENNGE株式会社

代表取締役社長兼CTO:小椋 一宏 設立:1996年11月 従業員数:240名(2022年6月現在)

HENNGE One

さまざまなクラウドサービスに対して、横断的にセキュアなアクセスとシングルサインオン機能などを提供するSaaS認証基盤(IDaaS)。誤送信・標的型攻撃など幅広いメールセキュリティにも対応した、リモートワーク時代には欠かせないセキュリティサービス。

多国籍なメンバーを積極的に採用する理由

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金子 茉由

御社では社員の約20%が外国籍のメンバーと伺っています。なぜ海外のメンバーを採用するようになったのでしょうか。

土居さん

当社では2011年に『HENNGE One』というサービスをリリースしました。震災の影響などでまさにSaaSビジネスが拡大していく状況であった一方、当時は社会的な技術者不足が叫ばれており、当社も同じ課題を抱えていたそうです。そうした課題を解決するための手段として、外国籍メンバーの採用を始めたと聞いています。

金子 茉由

なるほど、最初の目的は人材の確保ということだったのですね。その後も継続的に外国籍メンバーの採用を続けたのはなぜですか?

土居さん

最初はエンジニア部門のみの採用だったのですが、彼らの成長意欲や高い貢献度が社内でも評判になり、いろいろな部署に外国籍メンバーがアサインされるようになりました。経営側の意向として、多様性にあふれた組織にすることでイノベーションの創出につなげたいという想いがあったようですね。

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オンライングローバルインターンシップの様子
金子 茉由

2013年から外国人の求職者向けにグローバルインターンシッププログラムを実施されていると伺いました。どのような内容で実施されているのですか?

土居さん

コロナ禍前は実際に来日してもらい、6週間くらいの仕事体験やコミュニケーションイベントを通じて、お互いのマッチングを確認していました。今はすべてリモートで行っていますが、オンライン上で各チームの紹介をしたりボードゲームで交流を深めたりしています。これまでに約163の国と地域から18,000人近くのインターンの応募があったと聞いています。

グローバルなチームづくりで最初に立ちはだかった壁

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多国籍メンバーで構成される開発チームを束ねる土居 俊也氏
金子 茉由

土居さんのお仕事内容や現在のチームの構成について教えていただけますか?

土居さん

当社で開発している『HENNGE One』というパッケージサービスの、HENNGE E-Mail Archiveの開発を行うチームのリーダーを1年程前から務めています。私を含めて7名のメンバーが所属しているのですが、年齢・国籍についてはバラバラです。日本人2名、インドネシア人1名、シンガポール人1名、フランス人1名、アメリカ人1名、ニュージーランド人1名のチーム構成です。

金子 茉由

出身地域がかなり多岐にわたるんですね。他の開発チームも同じような構成なのですか?

土居さん

そうですね。いくつかの開発チームを経験したのですが、やはり年齢や国籍はバラバラでした。特に開発部門は36名のメンバーのうち外国籍メンバーが26名在籍しており、当社のなかでも外国籍の方が占める割合が高いですね。

金子 茉由

グローバルな組織でリーダーを務めるにあたり、戸惑ったことはありましたか?

土居さん

当社は2016年から英語を社内公用語としているのですが、メンバーのモチベーションや気分など、人の気持ちの機微に関わるコミュニケーションを英語で行うことに関しては、いち開発メンバーだった頃とは違った難しさを感じています。技術やシステムに関する英語には慣れていたのですが、マネジメントでの英語となるとまた違ってくるからです。

金子 茉由

もともと土居さんは英語がお得意だったのですか?

土居さん

いいえ、入社前はまったくできなかったです。2015年に新卒入社してから、現場の要求に応じてキャッチアップしたような感じですね。

金子 茉由

それはすごいですね!英語の上達のために、土居さん個人としてはどのような工夫をされたのですか?

土居さん

なるべく英語に触れる時間を作るために、PCやスマホの言語設定を英語にするところから始めました。他にも開発で必要な検索をあえて英語で行ったり、気に入った動画を見つづけたりして、意識的に英語を読んだり聞いたりすること自体に慣れるようにしました。

土居さん

あとは知識だけ得ても実践ができなければ意味がありませんので、アウトプット優先で取り組みました。具体的には英語で2~3行くらいの短い日記を付けてみたんです。さらに社内でも率先して英語であいさつをすることで、“英語を話す気持ちがある”ということを周囲に伝えました。下手でも書く、下手でもしゃべるということを意識しましたね。

ローコンテクストなコミュニケーションが異文化理解のカギ

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金子 茉由

さまざまなバックグラウンドをもつメンバーを束ねるために、土居さんが取り組まれたことについて教えていただけますか。

土居さん

メンバーとの「ローコンテクスト(※)」なコミュニケーションを意識しています。日本人同士だと、つい “察する”“空気を読む”といったコミュニケーションを取ってしまいがちですが、外国籍のメンバーには文脈も含めてきちんと説明しないと、うまく伝わりません。なるべく言葉で丁寧に伝えたり、齟齬がないように書き下す(記録を残す)ことを意識してきました。

※ローコンテクスト:コミュニケーションにおいて、言葉による表現を重視すること。反対語はハイコンテクスト(行間を読むなど文脈を重視すること)。
土居さん

もう一つが、自分たちが思う“常識”や“普通”を捨てるということですね。自分たちの型にあてはめるコミュニケーションではなく、双方が納得できるポイントを探ることが大事だと思います。

土居さん

これは当社の社長も話していることなのですが、バックグラウンドが異なる人たちの集まりですと、お互いの違いではなく「共通点」を自然と探すようになるんですね。 違うからこそ、お互いに何を大切にしているのかを知る必要がある。グローバルであることの強みを活かすためには、外国人を日本人にするという考え方ではなく、「みなで共通言語をもってフラットにディスカッションできる」土台をつくることが必要だと感じます。その結果、新しいアイデアやイノベーションを生み出すことができるのではないでしょうか。

土居さん

あと当社が定める【HENNGE WAY(行動指針)】のなかに、「Have Transparent&Open Communication」という言葉があり、「オープンなコミュニケーションを取ること」や「必要以上に透明性を高めること」を標榜しているのですが、現場としても“オープンにする”ということを、とても大切にしています。

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HENNGE社員の8つの行動指針が定められた「HENNGE WAY」
金子 茉由

マネジメントにおいて言語の壁はありましたか?

土居さん

最初はうまくこちらの意図が伝わらず、何度も聞き直されたりもしました。挫折感を覚えたこともありましたが、あきらめずにコミュニケーションを取りつづけた結果、相手も理解してくれるようになったと思います。

金子 茉由

土居さんのチームメンバーはコミュニケーションを積極的に取ってくれるほうですか?

土居さん

はい。当社で働いている外国籍メンバーは日本で働きたくて来日しているので、好奇心が旺盛です。開発のことだけでなく、たとえばゴミの捨て方など日本の文化・風習に関しても、積極的に質問してくれます。話し好きの方が多く、日本人以上に会話の糸口が多いように感じますね。

金子 茉由

なるほど、ベースにある好奇心の強さという点が、コミュニケーションを円滑にする一つのポイントかもしれませんね。ちなみに組織のコミュニケーションにおいて、コロナ禍の影響はありませんでしたか?

土居さん

コロナ禍前に行っていたコミュニケーションランチ(2週間に1回誰でも参加できるランチ会)を、少しずつ再開しています。今年の6月には開発メンバー30名ほどでワーケーション合宿も行いました。オンサイトのコミュニケーションも増えてきていますね。

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別府で行われたワーケーション合宿。日常のテレワーク疲れからの解放にも

ダイバーシティを加速させるための秘訣

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インスパイア祭りの開催風景
金子 茉由

御社では2018年から毎年社内ピッチイベントの「インスパイア祭り」というものを実施しているそうですね。

土居さん

はい、新規アイデアの提案は意図的に組織横断のプロジェクトで実施しています。さまざまな部門の社員同士が連携することで、日本人同士でも考え方や価値観が違うということに改めて気づきましたし、互いの共通項を探すことが大事だなと強く思うようになりました。

金子 茉由

まさに会社としてダイバーシティを体現されているのですね。こうしたグローバル化の取り組みが成功された秘訣はどこにあると思いますか?

土居さん

当社では「まずは挑戦してみて、失敗したら次を考える」という文化があるので、早い段階で外国籍エンジニア採用・英語公用語化といったことに着手できたのかもしれないですね。最初は社内で反対や戸惑いの声も挙がったそうなのですが、失敗しても構わないからまずはやってみようというところからスタートしたからこそ、よい結果が得られたのだと思います。

金子 茉由

最後に、エンジニアとしてグローバルな環境に身を置いてよかったと感じることを教えてください。

土居さん

たとえば情報収集の場面において、英語での検索ができることでアクセスできる情報量が格段に増えますし、結果として開発スピードも上がります。また、グローバルメンバーの方たちは文化的な背景からディベートやディスカッションに慣れている傾向にあり、業務で話し合いを行う際にも議論が活発になりやすいといったメリットを感じています。私自身、そうした組織をリードする面白さを実感していますし、これからもメンバーたちと一緒にみなが楽しく働ける組織をつくりつづけていきたいと思っています。

<取材後記>

土居さんのお話からは、行動指針をはじめ会社として目指している姿が各現場に浸透しているからこそ、多様性あふれる組織づくりが実現できている様子が伝わってきました。国内の労働市場を鑑みても、エンジニアはグローバルな競争にさらされているといっても過言ではないかと思います。そうした状況のなかでも活躍できるエンジニア、また今後グローバルメンバーをマネジメントしていくエンジニアになるためのヒントとしていただければ幸いです!

ライター

金子 茉由
12年勤務した大手人材会社を退職後、フリーランスライターに転身。会社員時代からIT業界のクライアントとの相性がよく、さまざまなIT系企業の採用活動支援や、エンジニアのスキル開発・育成支援業務に携わってきた。いまの一番の関心ごとは、子ども向けプログラミング教育の未来について。
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