エンジニア・IT系なら絶対にハマる!マンガソムリエと選ぶおすすめマンガ10選 Part1 ~近未来SF・短編~
コロナ禍でリモートワークが増えて外出も減ったこの頃、マンガを読む時間が増えている方も多いのではないでしょうか。
そんな皆さんにおすすめのマンガを紹介する企画が、アンドエンジニアにて始まります!
本企画では特に読者のエンジニアやIT系の方に刺さる作品をピックアップ!
紹介するのは、マンガデータベースとレコメンドAIを自身に実装している(?)とも噂されているマンガソムリエの兎来栄寿(とらいえいす)さん。
今回のテーマは、1話完結や短い時間でも読める短編の近未来SFです!
兎来さん、早速レコメンドをお願いします!
宇宙時代への期待が膨らむ『宙に参る』
まず、今回のテーマにぴったり当てはまると思ったのが『宙(そら)に参る』という作品です。 Webマンガなんですが、次に来るマンガ大賞のWebマンガ部門に二年連続ノミネートされています。
タイトルで分かると思うのですが、宇宙をテーマにした近未来SFマンガです。 こちらから数話は無料で読めるのでぜひご覧ください。
主人公は地球外のコロニーに住んでいるのですが、夫が亡くなりその遺骨を地球に住む義母に届けに行くというのが1話目なんですよ。 冒頭は夫の葬儀に地球や他のコロニーに住む人がディスプレイで参加する遠隔葬儀から始まるんです。
うわ、そのシーンだけでもう読みたい。
オススメのエピソードは、今ウェブでも読める第3話の「永世中立棋星」ですね。 世界トップクラス演算能力を持つ将棋AIが、実は人格なども持っていて…?という話です。
兎来さんの推しのポイントはどこですか?
とにかく出てくるものがすごく未来的なんですよね。 宇宙に行ける時代には実現してそうな、ワクワクできるガジェットやクセのあるロボットがたくさん出てきたり。 料理も普通の料理じゃなくて、無機物を掛け合わせた「甘酢っぱ鉄冷たい」という新しい形容詞で表現される料理が出てきたり。
背景を含めて描き込みが多くて上手だったりセリフが面白かったり、細かいところまで詰まってて世界観に触れているだけでも楽しいですね。
そうですね、細かい部分まで楽しめるマンガだと思います。まだ1巻しか出てないのでぜひ読んでみてください。 『宙に参る』が掲載されているトーチwebの作品はどれも変態(褒めている)なので、本作以外もぜひご覧ください。
「ロボット」と「人間」を描く『機械仕掛けの愛』
次のオススメは『機械仕掛けの愛』という作品です。 手塚治虫文化賞の短編賞や文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞し、NHKでラジオドラマ放映もされたんですが、一般にはあまり知られていない印象です。
1巻と2巻は無料で読めるんですね…!
すごくいい作品なので、1巻と2巻だけでもぜひ読んでください。 人間と機械や、人間とAIをテーマにした、1話完結型のオムニバス作品です。
毎回いろんな性格や役割を持ったロボットが出てきて、事件が起きてそれが解決されていく、という話の流れです。 紹介文のとおり、ロボットたちの愛情と葛藤だけじゃなくそこに関わる人間も描かれる作品で、とても心が動かされます。
兎来さんの推しポイントはどこでしょう?
話の展開が、心温まって泣けるようないい話から、怖いなと思わされるようなぞっとする話まで、振り幅があるんです。 最後までどちらの展開なのか全然分からないので、読みながらちょっとドキドキします。
また、絵柄はすごく素朴で万人受けするような藤子不二雄とかに近い感じなんですけど、テーマ的には手塚治虫が書いているものに近い感じもあって、すごく奥深いところも魅力的です。
読んでみるとどのエピソードもグッとくるものがありますよね…。 オススメのエピソードってありますか?
4巻の「未来計算機」ですかね。 ある夫婦がロボットに「2人は7年後に離婚します。」と言われるところから始まるんです。 そうならないように過ごすんですけど、でもだんだんと実現しそうな雰囲気になってしまい…。
DNAやGPSによる行動データ、検索履歴などのビッグデータの解析から予知するんですが、近い未来は想像できる気がして考えさせられる作品です。
6巻まで刊行していますが、どのエピソードも面白いですし、ぜひ読んでほしいですね…!
今世紀最高の近未来SF『預言者ピッピ』
そして、このテーマで一番オススメするのが『預言者ピッピ』です。 近未来SFとしてもそうですが、それを抜きにしても今世紀でトップ5に入る作品だと思っています。
兎来さんをしてそこまで言わせるとは…!
地震予知のために開発されたヒューマノイド型コンピュータ「ピッピ」が、人類の未来もすべて計算してしまい…という話です。 ピッピの活躍や処遇をめぐる人々の葛藤や意見のぶつかり合いを見て、考えさせられる点が多くあります。
兎来さんの推しポイントはどこですか?
セリフや提示しているテーマがすごく哲学的なんです。 「いつか死ぬのなら今死ぬのも後で死ぬのも一緒ではないのか?」 「努力する前に結果がわかったら、人はそれでも努力をするのか?」 というような問いかけが多くあり、知的好奇心を刺激してくれる作品として極限と言えると思います。
今のところは2巻ですが、まだ完結はしてないんですよね?
続きが3年後に出ますと言われて7年くらい経ちましたね。 ただ、作者・地下沢中也さんが続刊についてのツイートを先日されていらっしゃったので、近いうちに続きが読めるかもしれません…!
完結まで時間はかかるかもしれませんが、それでも読んでほしいくらいの作品です。 手塚治虫先生の『火の鳥』が好きな方には特に刺さると思いますので、心当たりのある方はぜひ。
兎来さんオススメ作品
ここからは一言紹介になってしまうのですが、他にも兎来さんのオススメを教えてください。
マンガ版星新一『アフター0』
読みやすいショート・ショート系で言うと『アフター0』がオススメです。 マンガ版星新一と評される作品で、本作はSFのお話が多くあります。
短いページ数で、面白い設定で、何か事件が起きて、ちゃんと面白くまとまる、ということを毎話しっかり繰り返す奇跡の漫画です。 短編が好きなら飽きないと思いますし、続編を加えると10巻ほどあるので、ボリュームたっぷりかと。
手塚治虫好きでも知らない?『SFミックス』
あえてここで手塚治虫をレコメンドするのですが、手塚治虫のSF短編を集めた短編集『SFミックス』です。 手塚治虫らしい人間への考察が入った話もあれば、すごくアクションに寄った話まで本当にいろいろで、初期から中期なので割と若々しさや実験的な部分もあって。
手塚治虫作品ではあまりメジャーではない作品なので、手塚治虫好きなら特に読んでみてほしいですね。
アンドエンジニア編集部オススメ作品
アンドエンジニア編集部やライターがオススメする短編の近未来SF作品はこちらです。 よろしければぜひお読みください…!
記憶のコントロールと向き合う『アイリウム』
1錠飲めば1日分の記憶を飛ばす薬をテーマにした『アイリウム』。 記憶をコントロールできる時に人はどう考え行動するのかというテーマは非常に興味深いです。
兵士、医師、育児中のママなど様々な人が記憶と向き合う1話完結の作品で、巻数も1巻のみです。 1話目はこちらから無料で読めるのでぜひ…!
最近では『iメンター』というこちらも近未来SFの新作を出版しておりますので、ぜひご覧ください。
あたたかい読後感のヒューマンSF『スキエンティア』
ヒューマンドラマ的な近未来SFの短編が7本揃う『スキエンティア』。 前向きな優しい話が多く、あたたかい読後感が得られる短編集です。
編集部が特にオススメするのは、自殺願望のある女性が車椅子の老婆に身体をレンタルする「ボディレンタル」というエピソードです。 作者の戸田誠二さんは、他にも『説得ゲーム』などヒューマンSFの短編作品が多くありますので、他作品も含めてオススメです!
馴染みのあるサービスが多い短編集『バイナリ畑でつかまえて』
『バイナリ畑でつかまえて』は1エピソードあたり2〜3ページで完結する短編集です。 作者の山田胡瓜さんが元IT記者であり、扱うテーマが恋していた人のストリートビューに映り込む姿、オレンジ色のSNSに残る黒歴史など、馴染みのあるサービスが揃っているのが特徴です。
オンラインメディア「ITmedia PC USER」で連載しており、こちらから無料でお読みいただけます。
ヒューマノイドが病を抱える時代を描く『AIの遺電子』
『AIの遺電子』は先ほどの『バイナリ畑でつかまえて』の山田胡瓜さんが描く連載作品。 ヒューマノイドと人が一緒な世界で暮らすことが当然になり、人と同様に病気を抱えるようになった時代の医者の物語です。
新章を含め多くの巻数が出ていますが、基本的に1話完結で読みやすい作品です。 本作も無料で数話だけ読めますので、どうぞ!
コロナ禍でもマンガとの出会いを
コロナ禍でテレワークが急速に進んだり、予定よりも少しだけ時代が早く進んだと思います。 それこそ『宙に参る』の遠隔葬儀ってこのコロナ禍で実際にあったりしたみたいで。
今回のテーマの「近未来SF」の作品は、もしかしたらあるかもしれない未来を先取りできる楽しさやワクワクがあります。 読者の方には、マンガを通してぜひそういう未来を感じてほしいですね。
今は漫画喫茶なども少し行きづらいでしょうし、マンガとの出会いの場って少なくなってしまったかもしれません。 そういう意味でも、この記事が新しいマンガとの出会いの場になってほしいですね。
今回レコメンドしていただいた作品、本当にすべて面白かったです! 読者の方もぜひ読んでみてください!
兎来さんにこういうテーマでおすすめマンガをレコメンドしてほしい!という要望があればぜひ編集部にリプライやDMで! 今後も兎来さんと一緒に、様々な切り口でエンジニアおすすめマンガをレコメンドしていきますので、どうぞお楽しみに…!
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