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アップルの「オーディオラボ」が実現したエンドツーエンドの聴覚体験とは?
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アップルの「オーディオラボ」が実現したエンドツーエンドの聴覚体験とは?

アンドエンジニア編集部
2024.11.15
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ファンタジアラボでは、無響室内に50個のスピーカーを球面上に配置し、均等に分散された音場で、現実世界の数百のサウンドシーンをシミュレートします。

カリフォルニア州クパチーノにあるアップルの最先端のオーディオラボは、音響エンジニアが革新的な仕事をすることをサポートしています。同ラボでは、さまざまなリスニングルームで反響音を完全に吸収し、外部ノイズを完全に遮断する無響室におけるテストを行うことができます。

同ラボは、スピーカー、マイクを備えたすべてのアップル製品の設計、測定、チューニング、検証をするためのハブになっています。また、AirPods Pro2の画期的な聴覚健康テスト機能の数年にわたる開発の中心にもなりました。

AirPods Pro2の無料アップデートとして入手可能なエンドツーエンド(※1)体験は、聴覚保護のために大きな環境騒音を軽減し、自宅での聴力テストを行うことで聴力の変化を追跡し、医療機器レベルに達する補聴器として軽度から中程度の難聴の聴覚を補うことができます。

※1 「エンドツーエンド(end-to-end)」通信を行う二者、または、二者間を結ぶ経路全体
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AirPods2の無料ソフトウェアアップデートでは、大きな環境音を抑え聴覚を保護する機能、自宅で聴力テストを行うことで聴覚の健康状態を追跡する機能や、補聴器機能で軽度から中程度の難聴を支援する機能が含まれています。

世界保健機関(WHO)によると、世界には15億人の難聴に悩む人がおり、WHO聴覚技術責任者であるシェリー・チャダ医学博士は以下のように指摘しています。

「難聴は、あらゆる国や地域の個人に影響を及ぼしますが、そのことに対する認識は進んでいるとは言えないのが現状です。聴覚は、多くの人にとってコミュニケーションの中心的な要素であり、健康と幸福のための重要な要素です」。

その上で、「テクノロジーは聴覚障害の影響を受けた人の意識を高め、支援の選択肢を提供する上で重要な役割を果たします」と話しています。

アップル健康担当副社長であるサンブル・デサイ医学博士は、「聴覚は人によって異なるためそれぞれに対応した、使いやすく、幅広いニーズに適応できる革新的なエンドツーエンドの聴覚健康機能を開発しました。聴覚障害は、さまざまな年齢、さまざまな技術地域レベルの人に影響を与えるため重要です」と話し、「聴覚の延長であるかのような直感的なものをつくることで人々の生活を変え、10億人以上いる方々への治療へのアクセスを開くことがわかっていたからです」と開発の背景を述べています。

こうした認識の上で、エンジニアチームがオーディオラボの高度に専門化された空間を使用して画期的な機能を実現。アップルの音響工学聴覚健康リードエンジニアのクバ・マズア氏は、「この音響施設では、最も静かな音から、騒々しいレストランでの会話、コンサートの大音響など、世界中のサウンドシーンの現実世界を再現することができます。ボタンを押すだけで、正確な音響測定を行うこともできます」と述べています。

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ロングウェーブは、アップル最大の無響室で、スピーカーと円弧状に配置されたマイクにより、さまざまな音が人体とどのように相互作用するかを測定することができます。

無響室「ロングウェーブ」は、スプリングを利用して、建物とは分離された基礎の上に構築され、騒音や振動に乱されることなく、正確な音の測定が可能。音が人体とどのように相互作用をするかを測定できるスピーカーとマイクが備えられたダミーヘッドが用意されており、AirPods、iPhone、HomePodなどの開発に活用されています。

「耳は天然のアンプですが、左右それぞれでユニークな形状をしており、しばしばわずかに非対称になっています」(マズア氏)。

「音が片方の耳に先に届くと、音の近くに時差が生まれます。これは環境音を正確に再現するために重要な要素です。そのため、AirPods Proを無響室内の回転する椅子に乗せて音声をキャプチャーすることで、環境音の体験を理解していきます」(同)。

ファンタジアラボでは、50個のスピーカーを球状に配置してショッピングモール、混雑した道路、飛行機内など何百もの現実世界のサウンドシーンを再現。均等に分散した音場を生成して、アップルが製造するすべてのオーディオ製品で最高の音質を確保するために利用されています。

補聴器の機能を微調整、検証するためにさまざまな聴覚レベル、さまざまな年齢、性別、国の研究ボランティアに、この制御された音響環境の中に入ってもらい、音声ノイズテストを実施。騒々しいレストランのような複雑なサウンドシーンを再生し、ボランティアには無響室の中央の椅子に座り、バックグラウンドから聞こえる会話の声と、1人のスピーカーの声を区別し、スピーカーの言葉を繰り返してもらいます。

マズア氏は、「このテストは、再創造性のテストです。人がショッピングモールを歩いたり、レストランで家族と夕食をするという日常生活に対するニーズを満たせるよう、この機能が有効であることを確認する必要があります」とし、テストの背景として「補聴器機能、会話強調モード、外部音取り込みモードなど、AirPodsに備わっている機能を調整し、検証するために、このようなテストを行いました」と述べています。

オーディオラボにはさらに、3つの医療レベルの聴力測定ブース(耳鼻咽喉科での聴力検査に使われるタイプ)が設置されており、エンジニアチームは専門家と協力して、新しい機能を臨床研究に移行するための内部テストとして、数回の医療レベルの聴力測定テストとソフトウェアによる聴覚テストを行いました。

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デザインチームは、 AirPods Pro 2の聴覚テスト機能をシンプルにするため、従来の聴覚テストの体験を決定する要素の広範な調査を行いました。

UI/UX(ユーザーインタフェース/ユーザー体験)は、新機能のテストにおいても重要でした。聴覚テストのために補聴器のセットアップを簡素化する設計を特定したほか、医師の診察で告げられる一連の数値もよりも、一般の人に理解しやすい表示が必要になりました。

アップルデザインスタジオのプロデューサーで、健康機能のすべてのデザインを支援するヘザー・ダニエル氏は、「健康機能の開発では、明確さとユーザーとの対話に重点を置きました」とし、「ぜひ、聴力テストを使ってみてください。これだけ多くの人が聴力テストを初めて受けることを意識して、可能な限りスムースに進むようにデザインしています」と話しています。

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補聴器機能を微調整し検証するために、さまざまな聴覚レベルを持つボランティが制御された環境の中で音声ノイズテストを受けます。
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ダミーヘッドは、AirPodsの聴覚テスト機能、補聴器機能を検証するために使用されました。

操作体験をシンプルにするため、アップルのさまざまなチームが、医療検査の要件を満たし、顧客に最高の製品を提供するために、あらゆる段階で協力する必要がありました。

「イノベーション、AirPodsに使われるテクノロジー、そして複雑な機能を構築するために、ソフトウェア/ハードウェアエンジニアリング、デザイン、健康、アクセセシビリティ、臨床オペレーション、法的規制、ヒューマンファクターエンジニアリングなど、多数のチームが集まりました」。

AirPods Pro 2でのエンドツーエンドの聴覚健康テストは、健康に対してアップルが支援できる事の一例にすぎません。チームのメンバーにとって、イノベーションと情熱が出会い、ユーザーの日々の生活の改善に役立つ製品を提供することを可能にした瞬間です。

「人々がAirPodsをつけて歩き回れること、コンサートで聴覚を保護できること、これらの機能を使って聴覚の健康に関して意識が変わることーーAirPodsはそれぞれの人がやりたいこと、必要なことを実現しています。AirPods Proはまさしく耳のインタフェースです」(マズア氏)としています。

【記事出典】Newsroom「Inside the Audio Lab:How Apple developed the world’s first end‑to‑end hearing health experience

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