東京・名古屋・大阪・福岡の選抜された学生たちが競い合ってオリジナルのプロダクトを開発し、業界のプロが審査する「A-TECH コンテスト」。「IT業界で通用するスキル」を身につけるシステム開発コンテストとして、2024年2月に第1回が開催されました。
本コンテストでグランプリに輝いたのは、タスク管理システムにギャンブルを掛け合わせた『Gamble To Do ~タスク×ギャンブル~』(以下『Gamble To Do』)という画期的なサイトです。斬新なアイデアはどのように生み出されたのか。当時、東京ビジネス・アカデミー/ITビジネス学科に在籍していた開発チームの田中悠斗さんと太田雄翔さんにプロダクトのデモ画面も見せてもらいながら、開発過程の苦労やこだわりのポイントを伺いました。
A-TECH コンテスト
学校法人21世紀アカデメイアが運営するビジネス・アカデミー4校のITビジネス学科・AIシステム学科から選抜された学生たちが、「企画力」と「技術力」を競い合うシステム開発コンテスト。チームで取り組むシステム構築やプレゼンテーション・デモンストレーションを通して、「IT業界で通用するスキル」を身につけ、より良い社会の実現に貢献する人材を育てることを目的に開催している。
『Gamble To Do ~タスク×ギャンブル~』とは?
「第1回A-TECH コンテスト全国大会」でのグランプリ受賞おめでとうございます。サイトの開発はどのようなチーム体制で進めていったのですか?
合計4名のメンバーで開発を進めていきました。その中で私は副リーダーとしてバックエンドの開発を行い、PHPでのコーディングを担当しています。
私はチームリーダーとしてプロジェクトマネジメントと全体のサポートを行い、コンテスト当日のプレゼンテーションも担当しました。他のメンバーにはフロントエンドの開発やサイトのデザイン作業を担当してもらっています。
今回開発された『Gamble To Do』はどんなサイトですか?
「タスク管理」と「ギャンブル」を組み合わせたサイトです。人は目標を達成しようとするときに「口で目標を宣言したものの、実際の行動を後回しにしてしまう傾向にある」と感じたことから着想を得ました。やる気満々で目標を立てたのに予定の期日を守らず、「明日やればいいや」とタスクをどんどん先延ばしにするのは誰しも経験があると思います。
例えば私の場合、ジムで1ヶ月がんばろうと思っても途中で面倒くさくなったり、一人だけではやる気が起こらなかったりして続きません。そもそも一生懸命がんばって目標を達成したとしても、まわりから「がんばったね」と言われるだけでは面白みがないのも続かない理由です。
タスクを後回しにする気持ちは痛いほどわかります。それに、がんばったときには「ご褒美がほしい」と思っちゃいますよね。
そうなんです。そこで開発したのが『Gamble To Do』。サイトのコンセプトは「タスクにチャレンジしながらギャンブルも楽しもう!」です。
タスク管理×ギャンブルの斬新なアイデアを思いついたきっかけは?
あるアプリゲームにインスパイアされています。やることリストを達成すると敵キャラにダメージを与えられるゲームなのですが、それを参考にしつつ「タスク管理」に何を掛け合わせるのかを考えていきました。その過程で日本人がギャンブルを好きなことに着目して、このコンセプトにたどり着きました。
日本人はそんなにギャンブル好きなんですか?
はい、次の統計を見ていただくと、日本人は世界34ヶ国中7位とかなり上のランクに入るほど、ギャンブルを好きなことがわかると思います。
そう言われてみると、日本には公営ギャンブルとして競馬、競輪、競艇、オートレース、身近なところでは宝くじまでありますもんね。
『Gamble To Do』で私たちが作成した機能は、大きく2つあります。まず1つ目はタスク管理としての機能です。目標達成にチャレンジするためタスクを作成できます。例えば、恋愛に関する目標であれば「クリスマスを彼女と過ごす」、就活に関する目標であれば「2024年の夏までに内定をもらう」、他にもダイエットの目標であれば「1ヶ月で3kg痩せる」というタスクなども。簡単なものから難しいものまで自分で設定できます。
ここまでは通常のタスク管理と変わりませんが、2つ目のギャンブル機能で、他の人のチャレンジ(タスク管理)にポイントを賭けて楽しめるようになっています。例えば、あるチャレンジャーが「1ヶ月で3kgやせる」という目標を立てたときに、ある男性ギャンブラーが「達成」に10ポイントを賭ける。また、別の女性ギャンブラーは「失敗」に10ポイントを賭ける。
結果を見てみると、チャレンジャーが目標を達成して3kgやせることに成功しました。その場合、「成功」に賭けていた男性ギャンブラーは配当として10ポイントがプラスされ、「失敗」に賭けていた女性ギャンブラーは当たらなかったのでポイントがマイナスされます。また、目標を達成したチャレンジャーにもポイントが加算されます。
なるほど、チャレンジャーが達成したかどうかの結果によって、ギャンブラーたちにポイントが加算されるということですね。この仕組みならみんなに注目されるので、タスクを達成したいチャレンジャーのやる気も高まりそうです。
ダイエットの目標などは、みんなに知られたくない方もいらっしゃると思うので、その場合は一人で挑戦してポイントを獲得できます。逆に招待コードを発行してSNSなどで告知すれば、より多くの人に自分のチャレンジを知ってもらうことも。達成に向けてモチベーションを高めたいときにはおすすめです。
デザインと「言葉の違い」が大きなハードルに
開発過程についても教えてください。サイト開発ではどんなことを重視しましたか?
やはり「独創性」ですね。というのも『Gamble To Do』の企画を着想する前は、リコメンド機能などを備えた旅行サイトを作っていました。しかし、既存の旅行サイトがその上位互換として存在していることがわかり、旅行サイトの制作を止め、イチから他のサイトを開発する決断をしました。そこからチーム内で話し合い、「今までにない画期的なサイトを作る」という方向性を決めて『Gamble To Do』の開発に至っています。
プロジェクトが立ち上がってからの開発はスムーズでしたか。
途中で詰まってしまうこともありましたね。例えば、トップページのデザインは何度も変えて検証を重ねています。それに合わせてテキスト部分も試行錯誤していました。
デザインがなかなか決まらなかったのはなぜですか?
単純にデザインが得意じゃないメンバーが集まっていたからだと思います(笑)。「ギャンブルで想起するカラーは何色?」という議論から始まって、カジノや白熱するなどのイメージから赤色に。わかりやすいトップページを心がけて、コインやサイコロのイラストもプラスしています。
見やすいデザインになっていますね。機能面についてはいかがですか。
タスク管理とギャンブルの機能をとにかく作ろうと突っ走っていきましたが、仕様変更が何度かありましたね。例えば、最初はポイント制ではなかったり、グループを組むことができなかったり。チャレンジャーやギャンブラーの気持ちになって、より使いやすい仕様に変えていきました。
特に苦労したのはどんなところですか?
やはりデザイン的な部分ではありますが、タスクの期限をあらわす円グラフを上手く作れず苦戦しましたね。簡単そうに見えて制作過程では意外とややこしく、いろいろな知識を組み合わせて取り組みました。
メンバー同士の連携についてはいかがですか?
チームに海外からの留学生がいたので、最初は言葉の壁に苦しみました。「今日はこの作業をお願いします」と割り振ったときに、意図が上手く伝わっていないこともありましたね。その日の作業報告になったとき、全く別の作業を進めていたことも(苦笑)。
どのように言葉の壁を乗り越えたんですか?
簡単な日本語であれば理解してもらえたので、できるだけ難しい言葉を使わないようにしたり、任せたいタスクを関連画像やお手本のサイトを見せながら説明したりしました。その結果、日本語が十分伝わらなくても、今日の作業内容は理解してもらえるようになりましたね。
プレゼンの秘訣は、自分の言葉で伝えること
田中さんはコンテスト当日のプレゼンテーションを担当されていますが、審査員からの反応は?
タスク管理とギャンブルを組み合わせるという発想自体が面白いと、多くの審査員から褒めていただきました。あとは技術面で、太田さんがこだわった円グラフでタスク完了までの時間が確認できることも評価していただきましたね。
田中さんのプレゼンも審査員から高評価でした。「私もデモンストレーションの説明をがんばったのに」と正直悔しかったです(苦笑)。
どんなポイントが評価されていたんですか?
自分の言葉で話していたことが高い評価につながったのではないかと。他のチームのメンバーは発表するときに手元の台本を見ながら話していたのですが、田中さんは台本を持つことなく常にモニターを見ながら説明していました。
台本は用意していなかったんですか?
台本を読む感じになるのが嫌だったので、紙に印刷しませんでした。投影するスライドのテキストを「箇条書き」にして、それをもとに自分の言葉で話すように意識しました。
プレゼン後の質疑応答も素晴らしかったですね。
ありがとうございます。その背景として、私たちが当時所属していたビジネス総合専門学校「東京ビジネス・アカデミー」で、しっかりコミュニケーションのことを学べたことが大きいのではないかと。今回のサイト開発を通して、開発現場では「メンバーとの連携が重要」だと実感しましたが、そのスキルを学生のうちから実践的に学べたのは、本当に良かったと感じています。
私も東京ビジネス・アカデミーに在籍しているときに、ITやAIのことを学んだり模擬プレゼンに取り組んだりするのはもちろん、各種のビジネスマナーを学べる授業もあったので、社会人としての基礎力を身につけられたと思います。
「ランキング」や「ガチャ」機能を実装したい
『Gamble To Do』について、今後ローンチの予定などはありますか?
今のところ一般公開する予定はありませんが、「東京ビジネス・アカデミー」のITビジネス学科・AIシステム学科の講師から授業で使いたいという話をいただいています。個人的には、ユーザーごとのランキング機能なども新たに実装して、他の人と競い合いながらタスク達成のモチベーションを維持できるようにしたいと思っています。
田中さんも新たに追加したい機能などありますか。
プレゼン後の質疑応答でもあったんですが、獲得したポイントの使い道ですね。中長期的にはポイントによるガチャ機能を搭載したいと考えています。ガチャの中で家具などいろんなアイテムを獲得できるようにして、サイト内の“マイルーム”に配置できるようにするとか。他のメンバーの部屋を見て刺激を受けながら、タスク達成やギャンブルにより励んでもらえるようにしたいと思っています。
またコンテストの審査員から、チャレンジャーとして参加するメリットとギャンブラーとして参加するメリットが明確に区別されていない、というコメントをいただきました。つまりチャレンジャー側で参加することに、魅力を感じにくいのではないかと。獲得できるポイントの量や種類を変えるなど、工夫できることはいろいろあるかもしれません。
最後にお二人のキャリアについての展望も教えてください。
IT開発エンジニアとして、さまざまな案件に携わっていきたいと思っています。フロントエンドを担当したり、サイト制作のUIに関する業務を担当したりしながら、エンジニアとしてのスキルを高めていきたいですね。
私もSEとして多くの経験を積んでいきたいと考えています。母校である「東京ビジネス・アカデミー」からも、MBA取得のコースなどを卒業後に案内してもらえるので、キャリアの選択肢が広がって助かります。今回の『Gamble To Do』の開発経験を活かしながら、より多くの方に使ってもらえるプロダクトをつくっていきたいと思います。
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