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VR、8K映像にも対応!新しい通信規格「Wi-Fi7」についてティーピーリンクジャパン担当者を直撃
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VR、8K映像にも対応!新しい通信規格「Wi-Fi7」についてティーピーリンクジャパン担当者を直撃

岸 裕介
2024.03.06
この記事でわかること
Wi-Fi7はWi-Fi6、6Eと何が違う?快適にWi-Fi環境が利用できる理由とは
Wi-Fi7によってエンジニアの仕事やゲーム体験はどう変わる?
Wi-Fi7の無線LAN製品「Deco BE85」の特徴

今や生活にも仕事にも欠かせないWi-Fi環境。容量の重いデータを処理することの多いエンジニアにとっては、パフォーマンス効率に大きく影響を及ぼします。2023年12月22日に総務省から発表された電波法改正を受け、日本でも最新の規格「320MHzバンド」が使用可能になりました。超高速でデータの転送速度や処理能力の高さが話題のWi-Fi7は、どんなところが優れているのでしょうか。

日本の無線LAN製品業界の中でいち早くWi-Fi7の無線LAN製品「Deco BE85」を販売したティーピーリンクジャパン株式会社で、技術部マネージャーを務めるフウさんにお話を伺いました。

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Deco BE85

2023年9月より販売を開始した国内初のトライバンドメッシュWi-Fi7ルーター。合計22Gbpsの高速通信を実現し、超高速&快適なメッシュWi-Fiで家中をカバーする。

VRや8K映像に対応するWi-Fi7とは?

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岸 裕介

Wi-Fi6とWi-Fi7の違いを簡単に教えていただけますでしょうか。

フウさん

Wi-Fi6が効率性を重視した規格だったのに対して、VRや10G回線に適応するスピードを重視した規格がWi-Fi7となります。Wi-Fi7の一つ前の規格Wi-Fi6Eが、つい最近日本で利用開始されましたが、その規格から6GHz帯という、今までWi-Fiで使われなかった電波のチャンネル(バンド)が使えるようになりました。6GHz帯はまだ使っている端末がほとんどいないので、混雑の少ないWi-Fi環境が使うことができます。

岸 裕介

QAM(アナログ信号やデジタルデータを伝送するために使う方式)にも変化があったそうですね。

フウさん

はい、Wi-Fi 6で採用されている1024-QAM(※1)に比べ、伝送速度が理論上20%向上しているので一度により多くのデータを送れます。また、Wi-Fi7はMLO(Multi-Link Operation)という機能が特徴的です。

フウさん

例えば従来のiPhoneでWi-Fiに繋ごうとすると、1つのバンド(2.4GHzや5GHz等)を選んで接続しますが、Wi-Fi7では複数のバンドとリンクできるようになっています。そうすることで、全体の速度を上げながら、遅延を抑えられます。また、いずれかのバンドの調子が悪いときにバックアップとしても機能するため、信頼性が向上します。

※1 QAM(Quadrature Amplitude Modulation)……デジタル通信における信号変調方式の一つ。データをアナログ信号に変換し、無線伝送路を介して送信するために使用される。Wi-Fiでは、異なるQAM方式が使用されており、それぞれの方式によってデータレートと信号の耐障害性が異なる。
岸 裕介

それはかなり利便性が高まりそうですね。Wi-Fi6Eから新たなチャンネルの帯域にリンクできるようになったとのことですが、これまで理論値と実行速度の乖離はかなりあったのでしょうか?

フウさん

今まで使われていた5GHzも理論値はかなり高速だったのですが、5GHz自体は20年前に開放され、10年ほど前の11ac規格で一気に普及したため、ほとんどの端末・ルーターが対応している状態になります。同時接続数が増えることにより、Wi-Fiの実行速度がどうしても落ちてしまうんです。6GHzはまだ混雑がないため速度が速く、有線接続に近い数字が出ています。

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岸 裕介

Wi-Fi7に至るまで、Wi-Fiにはどのような変化がありましたか?

フウさん

Wi-Fiの進化にはスマートフォンやタブレットの影響が深く関わっていると考えています。スマートフォン、タブレットが登場した頃、2013年にWi-Fi5という規格がリリースされました。この規格に対応した端末のスピードは1ギガほどで、iPhoneでYouTubeなどの動画を見るといったことが満足に出来るようになりました。有線LANを使わないパソコンやテレビも増え始めました。

岸 裕介

Wi-Fi6になったのはいつ頃でしょうか?

フウさん

2019年です。効率性を重視した規格で、これによってWi-Fiルーターにスマートフォン1台だけでなく、家族のスマートフォン、タブレットを何台も繋ぎ、全ての端末でYouTubeやTikTokなど大容量の通信に対応できるようになりました。

フウさん

コロナ禍であまり活用されませんでしたが、元々は音楽フェスのような大きなイベントや、ショッピングモールでのWi-Fi提供なども視野に入れ、大量に接続することを主眼にした規格でした。

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岸 裕介

なるほど、2019年にWi-Fi6が登場してから飛躍的に通信環境が向上しているんですね。そこからなぜWi-Fi7が開発されたんですか?

フウさん

近年では10ギガの回線が普及してきて、VRコンテンツや3D、8K動画もYouTubeでは増えていくため、コンテンツがかなり重くなっていました。Wi-Fi6や6Eでは実行速度が足りない部分があり、そこで現れたのがWi-Fi7でした。

岸 裕介

Wi-Fi7以前は、大容量の通信に対応できるかどうかが課題だったということでしょうか。

フウさん

ええ。働き方の変化も大きく、以前はPCをオフィスの固定席で有線に繋ぐのが常識でしたが、現在はフリーアドレス制が浸透してきてWi-Fiで繋ぐことが増えました。クラウドベースのアプリも多く、メールサービスなどはクラウドサーバーに常時メールの有無を確かめる通信を行っています。小さな通信を常にし続けなければいけないため、今までのWi-Fi環境では力不足なところがあったのです。

岸 裕介

働き方の変化も影響しているのですね。コロナ禍で世界的にテレワークが加速し、PCはWi-Fiが主流になりましたよね。Wi-Fi7は海外では既に使用が進んでいるのでしょうか。

フウさん

アメリカ・ヨーロッパでは日本よりはリリースが早く、環境端末も出始めているようです。日本でもアメリカ・ヨーロッパよりも遅くはなりますが、Wi-Fi 7製品が続々と発売されてくると思います。

転送時間の短さと遅延の減少で、エンジニアのストレスを解消

岸 裕介

Wi-Fi7はエンジニアにどう影響しそうでしょうか?

フウさん

非常に容量の大きいアプリや動画ファイルを作成するとき、確認出しや細かい修正を行うたびに、データの書き出しや転送に時間がかかることがあると思います。Wi-Fi7のような高速のWi-Fiが使えると、この待ち時間を大幅に短縮できます。また、遅延が少ないことも特徴で、リモートで操作するアプリを使って作業する際にも有利になると考えています。

岸 裕介

データの書き出しや転送時間の長さというのはストレスを感じているエンジニアも多いと思います。それが解消されるのはうれしいですね。遅延の減少は先ほどお話しいただいたMLOによるものでしょうか?

フウさん

MLOを始めとするいくつかの機能が動作して、遅延を減らすことができます。

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岸 裕介

ゲーム体験への影響はいかがでしょうか?

フウさん

そこもやはり遅延の短縮が大きいです。シビアにゲームされる方はいわゆるping値みたいな遅延を気にされると思うんですけども、Wi-Fi7ではそれらの短縮がメリットです。特にスマートフォンで、シューティングゲームとかされる方だと、どうしても無線を利用することになるので、そういった場合は、Wi-Fi7が有利になってくると思います。

岸 裕介

オンライン対戦などでは遅延は気になりますよね。他にもWi-Fi7によって便利になるシーンはありますか?

フウさん

リモート操作が発生する自動車工場などの産業分野でも便利になるのではないでしょうか。近年では8Kの映像を用いながら作業することも増えており、重い容量を高速で対応するにはWi-Fi7が向いています。

Wi-Fi7の速さと遅延の少なさをダイレクトに体感できるメッシュWi-Fi

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岸 裕介

TP-LinkがWi-Fi7の無線LAN製品「Deco BE85」を発売したのは2023年9月と国内ではかなり早いタイミングだったかと思います。

フウさん

そうですね。6Eの製品が市場に出始めた頃には既に7の製品に着手していました。全世界で製品を展開しているため、 各国の情報を基に製品ラインナップを検討し、ローカライズを行なっています。

岸 裕介

海外と日本でニーズの違いはあるのでしょうか?

フウさん

顕著なのは、デザイン性です。日本市場向けにはアンテナが出ない縦型のモデルを展開しています。海外では横置きでアンテナが立っているものが主流なのですが、都心の住宅ではスペースを取ってしまうことや、見た目を気にされる方が多いため、アンテナが表に出ないデザインを日本市場用に採用しています。

岸 裕介

海外ではアンテナが立っているものの方が好まれる?

フウさん

ええ、むしろアンテナが目立つ方が「電波が届きそう」と好意的に捉えられるようです。また、横型だとパッケージが大きくなり、販売店舗に置いたときに目立つので海外商品はスペースをそこまで気にしていません。

岸 裕介

国民性の違いが見えて面白いですね。Wi-Fi7の無線LAN製品「Deco BE85」についても教えてください。

フウさん

DecoシリーズはメッシュWi-Fi(※2)を構築するためのルーターとなっています。メッシュWi-Fiとは、ルーターと中継機をセットで利用するのですが、ルーターと中継機が無線で繋がっていることで電波の範囲を広げることができます。

フウさん

これによって、Wi-Fi6EやWi-Fi7に対応した端末を保持していなくとも、最新規格のスピードや遅延の少なさを、ダイレクトで感じることができます。そのため、Wi-Fi7が出て間もない時期には、メッシュWi-Fiを導入することを非常におすすめしております。

※2 メッシュWi-Fi……従来の単一のワイヤレスルーターではなく、複数のアクセスポイント(ノード)が連携して一体化したネットワークを構築するための技術。広範囲のエリアをカバーするために信号を複数のアクセスポイント間で中継することで、信号の強度やカバレッジを向上させる。
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岸 裕介

対応している端末を保持していなければ、どんなにWi-Fiが進化してもそれを享受できないことが多いですが、メッシュWi-Fiを導入すればすぐにWi-Fi7を体感できるのですね。

フウさん

「Deco BE85」は2台で14万円ほどの価格なのですが、Wi-Fi6E規格のものであればそれよりもかなり安価に購入できます。DecoシリーズはMLO(マルチリンクオペレーション)と非常に類似した仕組みを利用してルーターと中継機を繋いでいるので、BE85以前の製品でもMLOのような安定して高速なメッシュWi-Fiをお使いいただけます。

岸 裕介

なるほど、他社と比べて商品を安価に提供できる理由は?

フウさん

自社工場を持ち、自社で完結できる製造ラインを持っていること、また世界に製品を展開していることが価格競争力に大きな影響を与えていると思います。私たちは、高い技術力とスピード感を持ちながら、手の届きやすい商品を提供することにこだわっています。

岸 裕介

使いやすさについてはいかがですか?

フウさん

ネットワーク機器の設定に慣れていない国にも製品を展開しているため、UI/UXについてのノウハウが豊富で、操作のしやすさを実現できます。例えば、初期設定についてはスマートフォンのアプリでグラフィックが載った画面を操作するだけで完了できるようにしており、どんな方でも使いやすくなっています。

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岸 裕介

「Deco BE85」などは2台セットで提供していますが、複数設置することで電波をカバーしやすくなるのでしょうか?

フウさん

はい、新しいマンションでは玄関の近くにインターネットの引き込みをしていることが多いと思いますが、3LDKほどの住宅の広さになると、ルーター1台では端まで届かなかったり、届いても安定しなかったりすることが非常に多いようです。そういったときにメッシュWi-Fiルーター2台セットを置いていただくと、安定して高速Wi-Fiをお使いいただけます。

岸 裕介

家の広さでもWi-Fiが届かないケースがあるのですね。

フウさん

そうですね、弊社が行ったDeco BE85の通信速度のテストでは、当機器が設置されている全ての部屋で6~7.5GbpsのWi-Fiスピードを計測しました。アメリカでは家が広いため、メッシュWi-Fiが主流となっています。

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岸 裕介

TP-Linkの製品が、ユーザーに選ばれている理由は?

フウさん

最新技術を安価でご提供できることが弊社の強みであり、お客様からご支持いただく理由だと考えております。例えば、メッシュWi-Fiは日本国内でかなり早い段階で販売していますが、価格を抑えて出すことができ、メッシュWi-Fiが普及する一因になれたように思います。

フウさん

2023年9月にはWi-Fi6E規格に対応したiPhone15Proが販売されたことで、iPhoneの買い換えと共にルーターを探された方も多くいらっしゃいました。お求めやすい価格で弊社の製品があるため、高速Wi-Fiをご家庭に届けることに貢献できていると自負しております。

Wi-Fi7によって広がる未来

岸 裕介

Wi-Fi7が出てきたことで、私たちの生活はどう変化していくのでしょうか。

フウさん

転送速度が早いので、ファイルを移そうとするときにUSBメモリを挿さなくても、インターネット経由やネットワーク上の共有ファイル機能を利用して、簡単にデータを移すことも増えていくと思います。

岸 裕介

Wi-Fi7の市場はこれからどんどん広がっていくのでしょうか。

フウさん

それは間違いないと思います。Wi-Fiが進化する度に、iPhoneやインテルのネットワークアダプターがリーダーとなり、どのメーカーも対応製品をリリースしてきました。同様の流れがWi-Fi7でも起こるのではないかと考えています。

岸 裕介

Wi-Fi7でかなりの高速化は実現されると思いますが、Wi-Fiの進化の余地はまだありそうでしょうか?ここからVRの利用が広がっていくと、さらに大容量が必要になりますよね。

フウさん

ええ、VRは本当に多くの容量が必要ですね。今VR機器を持っている人は少ないと思いますが、最先端のスマートフォンではVR映像がどんどん撮れるようになるといわれています。そうなると、Wi-Fi7でも足りない部分が出てくるのかもしれません。

岸 裕介

最後に、ティーピーリンクジャパンの今後の展望を教えてください。

フウさん

最新のテクノロジーを出していくことはもちろん、手に取りやすい価格の製品ラインナップを出していくことも重要視しております。Wi-Fi7でもそういった製品を今後販売していく予定です。併せて、旧規格のWi-Fi6や5の製品も、さらに手に取りやすい価格で、お客様のニーズに合ったものをお選びいただけるようにしていきたいと思います。

ライター

岸 裕介
大学卒業後、構成作家・フリーランスライターとして、幅広いメディア媒体に携わる。現在は採用関連のインタビュー記事や新卒採用パンフレットの制作に注力しながら、SaaS企業のマーケティングにも携わっている。いま一番関心があるのは、キャンプ場でワーケーションできるのかどうか。
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