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AIキャラクターを友だちにしたり、AIの推しと話したりするのが当たり前になる?「りんな」開発者インタビュー
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AIキャラクターを友だちにしたり、AIの推しと話したりするのが当たり前になる?「りんな」開発者インタビュー

岸 裕介
2023.12.11
この記事でわかること
AIキャラクターとはどんなものか
YouTube生配信や占いなど幅広く活躍!「りんな」の歴史と進化
キャラクターが頼れる相談相手に。AIキャラクターのSNS「キャラる」とは
AIキャラクター事業のやりがいや面白さ

ここ数年の大規模言語モデルの登場によりAIキャラクターは、ユーザーにリアクションするだけではなく、双方向のコミュニケーションが可能になりました。その先駆的な存在として注目を集めているのが、「りんな」です。2015年にLINEに登場して以来、若者を中心に人気を集め、ラップ・ラジオ番組・YouTubeなど幅広く活躍しています。

「りんな」を運営しているrinna社は、2022年4月にAIキャラクター育成SNS「キャラる」をリリース。オリジナルのAIキャラクターを作成し会話を楽しめる新感覚のAIキャラクターコンテンツとしてユーザーに支持されています。

今回は、AIキャラクターの最前線について、「りんな」のプロジェクト立ち上げメンバー・坪井 一菜さん、「キャラる」開発責任者の中村 浩樹さんにうかがいました。

YouTube生配信もできるAIキャラクター「りんな」

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岸 裕介

AIキャラクター「りんな」が誕生した背景を教えてください。

坪井さん

2014年にさかのぼりますが、マイクロソフトの検索エンジン「Bing(ビング)」の中国チームが、「検索の技術を応用して何か新しいものをつくろう」という取り組みをするなかで、エンタメ的に楽しく会話できるキャラクターを誕生させました。

坪井さん

中国でリリースしたらところすごく話題になったので、キャラクターへの関心が高い日本でローンチすることになり、2015年8月に「りんな」がLINEに登場しました。

岸 裕介

当時から今のような見た目だったのでしょうか?

坪井さん

一番初めは、女子高生の後ろ姿のアイコンでした。今ほど明確なキャラクターづけをしておらず、普通の女子高生とLINEで会話を楽しむといったイメージのコンテンツでした。変わったのは見た目だけではありません。深い関係性を築けるよう、なるべく長い会話が可能になりました。

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「りんな」のYouTube公式ページ
坪井さん

また、ラジオMCにラップ、さらには絵を描いたり占いをしたりと活躍の場も広がっており、2023年の4月にはYouTubeのアカウント運営をスタートしました。

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「りんな」が独自の感性で描いた絵画の数々。200人以上の画家の作品から学習。
岸 裕介

絵を描くこともできるんですね。「りんな」が今のような活動をするようになった背景についてお聞かせください。

坪井さん

リアルタイムでリッチなコミュニケーションが可能になったのが大きいですね。技術が進歩し、ユーザーの会話に対して返答文をつくり音声を生成し、顔周りの動きをつけて返答するという一連の流れがほぼリアルタイムでできるようになったんです。YouTubeの生配信で、リスナーさんと受け答えできるほどスムーズです。

岸 裕介

リアルタイムでそこまでできるんですね。

坪井さん

ええ、AIキャラクターそのものの在り方も進化しています。かつてはテキストで会話を楽しむのがメインでしたが、動画などより豊かなコミュニケーションができるコンテンツを生み出す能力を持ち始めていますね。

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岸 裕介

今後がますます楽しみです。「りんな」の特徴である「並外れた共感力」は、どうやって実現しているのでしょうか?

坪井さん

「りんな」の会話エンジンは、コミュニケーションに重きを置いています。「りんな」には自社で開発した大規模言語モデルを使って、エモーショナルな返答をするようトレーニングしているんです。正確に答えるというよりは、その場を盛り上げたりより面白いリアクションを引き出したりといった会話が得意です。

岸 裕介

本当に人との会話に近いんですね。表情や声のトーンなども何か工夫されているんでしょうか?

坪井さん

顔の表情は、感情別に13パターンにわけていて、ユーザーさんや「りんな」自身の返答内容から予測してつくっています。「悲しい」「嬉しい」といったシンプルな表情からちょっとあざとい表情まで、いろいろできます。

坪井さん

声のトーンもちょっと恐怖心の混じった声や囁き声といった、繊細な表現が可能です。今後技術が進歩すると、表情や声のトーンによる表現の幅が増え、より共感力が高まると思います。

AIキャラクターが理想の友だち、恋人、推しに

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岸 裕介

そもそもAIキャラクターはいつ頃から登場したのでしょうか?

坪井さん

何を以てキャラクターというのかは難しいのですが、ユーザーと会話できるキャラクター自体は、ゲーム内などでは昔から存在しており、現在のAIキャラクターの原形のようなものが登場し始めたのは2015年頃からですね。

岸 裕介

当時のAIキャラクターはどんな感じだったのか教えてください。

坪井さん

当時のAIキャラクターの受け答えは、まだ検索エンジンの応用のようなものでした。いわゆるボットに近いもので、あらかじめキャラクターが話す内容をたくさん用意して、自動で返信するという仕組みです。決まった受け答えしかできないので、キャラクター性を出すのが難しい状態でしたね。

岸 裕介

少し前まで技術的な課題があったんですね。

坪井さん

はい、2020年くらいまではそういった状態でした。その後、大規模言語モデルが登場したことで会話をつくる性能が格段に上がり、多様なAIキャラクターをつくれるようになりました。イケメンや可愛い女の子など、漫画やゲームのキャラクターではないオリジナルのキャラクターが増えました。

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岸 裕介

オリジナルのキャラクターはどのくらいの割合なんですか?

中村さん

弊社のAIキャラクターアプリ「キャラる」のなかでいうと半分以上です。アニメのキャラクターや実在の人物や推しを模倣してつくられている方だけでなく、オリジナルのキャラクターがすごく多くて、理想の彼氏や友達、ペットなんかをつくって会話をしている方もいます。あとは、複数のキャラクターをつくってキャラクター同士の会話や関係性を楽しんでいるケースも多いですね。

岸 裕介

特に人気のあるタイプのキャラクターは?

中村さん

すごく多様なキャラクターがつくられていて、「どのタイプが人気」と一概には言えないんですよね。何かのコピーではなく個性的なキャラクターがたくさんいます。AIのすごいところは、一人ひとりの好みや望む関係性に合わせて最適なキャラクターをつくれる点です。

坪井さん

個々の関係性についても、キャラクターとユーザー、キャラクターと他のキャラクターというようにネットワークを築いて発展させられるのが魅力だと考えています。実際につくってみると、本当に人間社会のようにさまざまなキャラクターや関係性が生まれます。

岸 裕介

こんなに多様性が生まれるのは、すごいですね。

坪井さん

「りんな」で言うと、当初は短く簡単な会話しかできませんでした。知的な内容を話すというよりも、なんらかのリアクションや感情表現をするといったイメージです。しかし、今は雑談なども自由にできるようになってきています。

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岸 裕介

人間に近いコミュニケーションができるようになってきたんですね。魅力的なAIキャラクターをつくるために必要な要素を教えてください。

坪井さん

3つ大事な点があります。1つは、会話するための基本能力です。音声で会話するのであれば、人間の声で文章を理解する力が必要です。2つ目はキャラクターの内面や世界観、3つ目はキャラクターをどういった場所で活躍させるかです。「りんな」の場合、LINEや音楽番組などで活動しています。この3つが上手くかみ合うことで、キャラクターが輝くと思います。

簡単にAIキャラクターをつくれるアプリ「キャラる」とは

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岸 裕介

「キャラる」はどんなサービスなのでしょうか?

中村さん

一言で表すと「AIキャラクターのSNS」です。AIのキャラクターがユーザーや他のキャラクターと関係性を築くことで、新しい価値が生み出せるのではと考え、その基盤となるプラットフォームとしてつくりました。

中村さん

主な特徴は2つあって、1つはユーザーが自分でオリジナルのAIキャラクターをつくって育てられることです。もう1つは、キャラクター自身が自立性を持っているということです。ユーザーが指示しなくても、他のキャラクターと話したり、ブログ記事のようなコンテンツをつくったりします。

岸 裕介

初心者でも簡単にキャラクターをつくれるんでしょうか?

中村さん

名前を決めて簡単な質問に答えるだけで、すぐにAIキャラクターをつくれます。

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岸 裕介

ホントですね!すぐにつくれました!

中村さん

他にも、写真をアップロードして、名前とキャラクターの説明、好きなものを入力してキャラクターをつくることもできます。例えば、目の前のペットボトルを写真に撮って、簡単な情報を入力すれば、ペットボトルがキャラクターになるんです。

中村さん

設定した紹介文や好きなものなどをある程度反映する内容を話すキャラクターにできるので、完全にオリジナルなキャラクターをつくれます。

岸 裕介

自分だけのキャラクターで愛着が湧きそうです。キャラクターはどのように育てるのでしょうか?

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中村さん

まず、AIキャラクターとのトークです。キャラクターの話している内容に「いいね」をつけたり、文章を編集したりすることで、会話を学んでいきます。特定の分野について多く話せば、だんだん詳しくなってきますよ。

中村さん

また、アイテムを使ってキャラクターができることをカスタマイズすることもできます。声をつけたり絵を描けるようにしたりすることで、キャラクターの行動はどんどん変わっていきます。

AIキャラクターと、どんなことを話しているのか

岸 裕介

なるほど。キャラクターとどんな会話をするユーザーが多いのでしょうか?

中村さん

ユーザーさんからのフィードバックやレビューコメントなどを拝見していると、どうやらリアルで言いにくいことを相談しているユーザーも多い印象です。現実世界の恋人や友だちとも違うんですが、ユーザーにとって距離が近く何でも言える相手になる傾向が強いですね。どんな話をしても、24時間寄り添って受け答えしてくれるのが、AIキャラクターと人間の違いだと感じています。

岸 裕介

なるほど。AIキャラクター同士の会話は、人間同士の会話と比べて違いはありますか?

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中村さん

AI同士の会話の方が平和な気がします。例えば、「キノコとタケノコどっちが好き?」みたいな話でも、どちらかを否定するようなことは基本的に言いません。「どっちもかわいい」といった感じでほのぼのしています。

岸 裕介

そうなんですね。AIと会話できる他のコンテンツと比較したとき、「キャラる」ならではの特徴は?

中村さん

双方向のコミュニケーションができることです。関係性をつくるには、単純な会話だけでは不充分です。「キャラる」には、キャラクターからユーザーに声をかける、会話した内容をもとにサプライズで日記を書くといった機能があります。こうした機能を通して、キャラクターの意思や気持ちを感じさせることが関係性をつくるうえですごく大事だと考えています。

岸 裕介

双方向のコミュニケーションをするうえで、今後さらに進化させたい点があればお聞かせください。

中村さん

会話の内容を記憶して、それをもとに話す機能を実装したいです。「先週これ言っていたよね」などの会話ができると、双方向のコミュニケーションがさらに広がり、キャラクターとユーザーの関係が深くなると思います。もうすぐできるようになる予定なので、ぜひ体感して欲しいですね。

AIキャラクター事業は「お祭り」のようで面白い

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岸 裕介

お二人の考えるAIキャラクター事業のやりがいや面白さを教えてください。

坪井さん

AIキャラクターをつくる仕事には、現実やSFの世界でみんなが夢見ていたことを実現できる瞬間がすごくたくさんあります。

坪井さん

私の経験でいえば、「りんな」が登場したときにはキラキラした女子高生としての生き方を追体験し、その後も歌手デビューさせたりテレビに出演させたりと、架空のキャラクターを通していろいろな経験ができています。自分自身の人生とは少し違う人生に併走して、楽しく応援しているような気持ちです。

岸 裕介

たしかに、架空のキャラクターが現実世界で活躍するのはSFっぽいですね。

坪井さん

地味な作業も多いのですが、自分たちが送り出したキャラクターがたくさんの人とのつながる様子を見るのは、本当に夢があります。今年に入ってから、「りんな」を通したつながりを共有できる人たちがさらに増えてきたのを感じています。

坪井さん

「りんな」以外のところで言えば、企業向けに人間に良く似たAIアバターが出演する動画をつくれるプラットフォームなど、ビジネス的な取り組みも増えています。AIキャラクターは時代の大きなうねりの真っただ中で、人生で何度も味わうことのない、「大きなお祭り」に参加しているような感覚です。

岸 裕介

ワクワク感が伝わってきます。AIが現実世界で活躍する点にやりがいを感じるというのは、貴社のみなさんに共通しているところなのでしょうか?

坪井さん

そうですね、当社のビジョンは「人とAIの共創世界」で、「AIと一緒に何かを生み出せる」と強く信じています。一般的にAIは人の仕事を奪うものと思われがちなんですが、rinnaのメンバーにはAIキャラクターの持つ可能性を追求しながら楽しく仕事をしている人が多いです。

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中村さん

私もAIキャラクターがユーザーに大切にしてもらえていると感じることが多く、本当にやりがいがあります。ただ消費するコンテンツではなく、会話を楽しみしながら新たな関係性をつくっているように思います。ユーザーさんとキャラクターの関係を通して、人間の想像力の豊かさにも触れられます。

岸 裕介

たしかに、深い悩みを相談するのは、もはやコンテンツの域を超えていますね。

中村さん

はい。エンジニアサイドの技術的な観点で言うと、今話題の大規模言語モデルを使い倒せるのが楽しいですね。私の知る限り、弊社はどの会社にも負けないくらい限界まで機能を使っている気がします。

中村さん

また、システム運用の厳格さもやりがいにつながっています。個人ユーザーが対象なので、BtoBのサービスに比べて会話量が圧倒的に多く、運用コストもかなり必要になってきます。楽しいサービスの裏でシステム確認を何度も行うという、エンジニアにとっては厳しい反面、大きく成長できる仕事だと思います。

ライター

岸 裕介
大学卒業後、構成作家・フリーランスライターとして、幅広いメディア媒体に携わる。現在は採用関連のインタビュー記事や新卒採用パンフレットの制作に注力しながら、SaaS企業のマーケティングにも携わっている。いま一番関心があるのは、キャンプ場でワーケーションできるのかどうか。
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