履歴書は問題なかったのに、採用してみればスキル不足だった。 いざ就職してみたら、思っていた仕事ではなかった。
ITエンジニアの採用・就職では、ミスマッチにより雇用側・労働者側ともに残念な結果になってしまうことが多々あります。
それを仕方のないこととして諦めず、ITエンジニアのスキルを見える化するサービス「TechFUL(テックフル)」を立ち上げたのが、444株式会社の薗田正和さん。薗田さん自身、IT企業の人事としてITエンジニア採用の困難に直面してきた経験があります。
今回はそんな薗田さんと、弱冠20歳にして技術部門マネージャーを務めている染葉さんにインタビュー。染葉さんはTechFULの利用者だった高校時代にそのスキルを認められ、スカウトされて入社したという経歴の持ち主。学歴も年齢も飛び越えて活躍している染葉さんは、まさにTechFULの象徴のような存在です。
このインタビューでは、ITエンジニア市場の現状と、TechFULによりITエンジニアの地位向上を目指したいという444のビジョンについて伺いました。
ITエンジニアは、学歴・年齢を超えて活躍できる職種
染葉さんは今20歳だそうですが、どんなお仕事をされていますか?
技術のマネージャーとして、主に2つの仕事をしています。1つは、TechFULの開発・保守運用チームのまとめ役。もう1つは、TechFULのコンテンツ制作(問題作り)。こちらは、アルバイトさんたちや技術顧問の先生と協力しながら作成しています。
20歳にして、すっかり重要人物ですね。TechFULにある幅広い問題を、全部理解できるんですか?
人工知能など、先端技術の問題作りに関しては、北海道大学の山本教授と北海道大学の院生チームで制作しています。また、そのほかの部分では、中部大学の藤吉教授も技術顧問としてついてくださっています。私自身もTechFULの問題作成に携わりながら、ITスキルを日々学んでいます。
それでも十分すごいと思います。染葉さんは、いつから444で働いていらっしゃるんですか?
高校生のときに、最初はアルバイトで入りました。TechFUL内のイベント「TechFUL Coding Battle」に参加していたら、スカウトしてもらったんです。もともと高校を卒業したら働くつもりだったので、そのまま新卒入社になった形です。
自分から応募したわけではなく、スカウトだったんですね。
「TechFUL Coding Battle」は、TechFULユーザー同士で楽しく切磋琢磨できるように開催しているイベントです。その成績やTechFUL内でのスコアを見てスカウトするのですが、実はまだ高校生だと知って驚きましたよ。「未成年でもいいのかな?親御さんの許可も取らないと!」、そんな状態でした。
スカウトするまでは、年齢や学歴がわからないんですね。TechFUL内の成績やスコアだけで、わかるものでしょうか?
今は自分がスカウトする側ですが、採用でミスマッチを感じることはほとんどありません。
学歴や年齢に関係なく、見える化されたスキルで勝負できる。ITエンジニア採用としては画期的で、まさにTechFULの目指す形の採用ですね。
染葉さんがTechFUL Coding Battleに参加するようになったのは、どんなきっかけですか?
通っていた高校の部活(情報処理部)が、専門学校主催のプログラミングコンテストに参加していたんです。その専門学校がTechFULを導入していた、というつながりです。そこで興味を持って、TechFULが主催するイベントにも個人的に参加するようになりました。
プログラミングを始めたのは中学校の情報部で、高校時代の情報処理部はプログラミングコンテストへの参加に力を入れていました。TechFULはプログラミングコンテストを専門とするサイトではないのですが、毎月開催するイベントでは出題テーマが指定されていて、自分の得意/不得意が見える化されてスキル上達に非常に役立ちました。
●プログラミングコンテストとは
なぜこんなにも人手不足?ITエンジニア市場の現在
経済産業省の試算では、2030年にITエンジニアが最大で79万人不足すると言われています。ITエンジニアの採用を間近で見ていらっしゃると思いますが、その数字はリアルだと感じますか?
最大79万人という予測が当たるかどうかは、わかりません。50万人かもしれないし、10万人かもしれない。でも、ITエンジニアが不足するのは確実だと考えています。
ITエンジニアになるのに学歴や資格はいらないし、参考書やオンライン教材も充実しています。何歳からでも目指せて、引き続き需要の高いITエンジニアは、これからの時代、わりと“アリ”な選択肢のはずですが、それでも不足するのですか?
「ITエンジニアの仕事は好きな人にしか務まらない、とても大変な仕事」と思っている人が多いですね。海外に比べるとITエンジニアの給料が低いので、収入面での魅力も弱いと思います。
文系出身のプログラマーやITエンジニアもけっこういますが、難しい理系の職業というイメージがとても強いんですね。
もちろん、IT業界が急速に拡大したことによる需要増も人手不足の原因です。
そんな状況で、さらに採用のミスマッチまで起きてしまうと、当人同士だけでなく社会全体の不利益になってしまいますね…。
私はIT企業の人事にいましたが、ITエンジニアの採用は本当に難しいです。人事が推す人材と開発部門のITエンジニアが推す人材が一致しないことも多いし、双方が認めて採用した人材でもミスマッチということもある。採用のミスマッチを解決して、ITエンジニアの市場価値を上げるために作ったのが、TechFULなんです。
スキルの見える化が、ITエンジニアの市場価値を上げる理由
TechFULによってミスマッチが防げるのは理解できますが、ITエンジニアの市場価値を上げるとはどういうことなんでしょう?
スキルが見える化されないと、その人の価値を判断しづらいですよね。採用側としても、ミスマッチのリスクがある相手に高い報酬を出したくはないでしょう。
「この人には自分たちが求めているスキルがある」と、採用側が確信を持てることが、正当な報酬につながるんですね。
採用される側もそうです。特に学生の場合、自分が学んでいることがどこにつながっていくのかがわかりづらく、自己評価が難しいんです。でも、スキルが見える化されると、自分に合った就職先を選べるようになります。
そうなると、TechFUL等で自分のスキルを磨いたり、自分のスキルレベルを調べたりする力がある人は、自分に合った就職先の中でもより待遇の良い求人を求めていきますよね。企業が優秀な人を採用するためには、待遇を良くするしかなくなっていくと思います。
学生・教育機関・企業―それぞれのTechFULの使い方
TechFULの具体的な機能や活用方法について、もう少し具体的に教えてください。「スキルの見える化」とは、どういうことですか?
TechFULの特長は、評価するスキルが細分化されていることです。プログラミング基礎、アルゴリズム、数学、データベース、人工知能基礎などに細かく分かれていて、それぞれグラフの色の濃さで習熟度が一目でわかるようになっています。
TechFULを使っているのは、学生さんや転職希望者などの求職側と、採用する側の企業、それから教育機関もですね。どんなふうに使われているのでしょうか?
ITエンジニア側は無料。エージェントのアドバイスも受けられる!
学生さんや転職を目指す人たちがTechFULを使うメリットは、スキルを見える化することで自信を持って就職活動できたり、TechFUL Coding Battle等のイベントで楽しく学べることでしょうか。
当社はミッションに「ワクワクできる、楽しめる、ITスキル測定と学習を提供する!」を掲げているので、解くのが楽しくなる問題作りを心がけています。
TechFULは就職・転職エージェントとも繋がっているので、「〇〇社を目指すなら、この分野をもっと勉強するといい」「もう少し問題を解かないと、意欲が伝わらない」といったアドバイスも受けられます。
そんな具体的なアドバイスももらえるんですね。それらも含めて、すべて無料なんですか?
求職者側が使うサービスはすべて無料で提供しています。問題を解くことでポートフォリオが完成していくのですが、TechFULのポートフォリオは書類審査通過率がとても高いんです。
楽しんで成長できる環境、充実したポートフォリオの作成、就活アドバイス、さらに染葉さんのように444さんからスカウトが来る可能性もあるなんて、ITエンジニアを目指す人にはお得なサービスですね。
スキルマッチを重視する企業が多数導入!入社テストもサポート
企業側はどうでしょう?スキルマッチするITエンジニアを紹介してくれる就職・転職エージェント的な位置づけですか?
TechFULに求人情報を掲載することはできますが、それだけではありません。新卒・中途採用のための入社テストや研修や評価、研修を行うためのスキル測定にも利用していただいています。
テスト問題を提供するということですか?
TechFULに蓄積されているスキル測定のための問題は、当然入社テストにも使えます。どういった人材が欲しいかで最適なテスト内容は変わるので、テスト作成にあたっては具体的なアドバイスも行っています。
単なる仲介ではなく、一緒に最適なITエンジニア採用をしていく感じなんですね。
TechFULでより正確なスキルマッチができるのは、よくわかります。でも、スコアだけでミスマッチは防げるのでしょうか。実際に仕事をするとなると、「立場上、ちょっとした管理業務もまかせたいのにできない」「思ってた仕事と違う」といった齟齬が起きてしまいそうな気もするのですが…。
TechFULはその特性上、「必要なスキルを確実に備えたITエンジニアを採用したい」と考える企業様の利用が多いんです。そのため、総合職での採用ではなく、ITエンジニア職として、職種別採用を行う企業様との親和性が高く、職種におけるマッチングも高いと考えております。
「マネージメント経験のあるシステムエンジニア」といった一般的な求人に比べて、企業側が期待することやITエンジニア側がやりたいことが具体的で明確なんですね。スキルが可視化されるからこそ、ですね。
効率的な授業で、離脱者を防ぐ―教育機関での活用法
TechFULは、教育機関でも使われていますよね。求職者と企業はわかりますが、教育機関ではどのように活用されているのでしょうか?
授業やテストで、使っていただいています。TechFUL内に用意してある問題を使えるほか、利用者の先生が作った教材や問題も登録できるので、先生の負荷がかなり軽減できます。
高校時代に私が参加したようなプログラミングコンテストの開催でも使われます。
幅広いですね!TechFULと学校や先生のオリジナル教材、使うバランスを自由に決められるのがいいですね。
学生のデータも、TechFULで管理できます。テストの成績だけでなく、オンライン授業への出席や課題の進捗状況もわかるので、授業で教えたことを学生が理解しているかどうかをすぐに判断できるというメリットがあります。
学生の理解度に合わせた、効率的なフォローができそうですね。
大学や専門学校では、初級レベルと上級レベルの学生が混在しています。 TechFULを使うと、例えば、上級レベルの学生に難しい問題を渡して自習させ、初級者を先生が直接フォローする、といった形を取れるようになります。
TechFUL Coding Battleなどのイベントは開催していますが、TechFULの目的はランキングを付けることではないし、優秀な学生を見つけて拾い上げることでもありません。初級レベルの学生をきちんとフォローして、離脱する人を減らしたいんです。
離脱せずにITエンジニアとして活躍できる人が増えれば、ITエンジニアの人手不足にも市場価値の向上にも貢献できるんですね。
IT業界にもっと価値を提供したい―444株式会社の展望
薗田さんはご自身の経験からTechFULを作られたわけですが、実際にサービスとして実現していている今、どう感じていらっしゃいますか?
ITエンジニアの成長につながるサービスを提供できていることは嬉しいですね。 「TechFULのおかげでいい人を採用できた」「TechFULは問題がおもしろい」「TechFULで成長できた」という声を聞ける喜びは、お金にかえられません。プライスレスです。
444さん自体もITエンジニアを募集されていますが、ITエンジニアとして実際に働いている染葉さんから見て、どんな環境ですか?
開発はもちろん、扱っているコンテンツもITスキルそのものですので、業務からもコンテンツからもスキルアップできる2倍の成長チャンスのある環境だと思います。業務については自分たちのアイデアをシステムに反映できたり、自分たちで技術を選べたり、自分の専門外の領域にも挑戦できたり(例えば私はバックエンドですが、フロントやインフラの業務も携わらせてもらえたり)と、ITエンジニアとしての自由度がとても高いです。能動的に働きたい人にとってはとても楽しい環境だと感じています。
最先端技術は、サービスに支障が出ない程度にほどほどに挑戦してもらおうかな(笑)。とはいえ、ITエンジニアの裁量にまかせている部分は大きいと思います。ただ、自由の裏には義務があります。自分が決めた期日を守らないとか、そういうタイプの人はつらくなっていくかもしれません。染葉くんのように、義務を楽しく果たしながら、新しい発想をどんどん試せる人には合っている会社ではないでしょうか。
では最後に、444さんとして、今後どのようなサービスを展開していきたいか教えてください。
今はスキルの測定だけですが、今後は学習の面も強化していきたいですね。いずれは、企業に先端技術のコンテンツを提供したりできればいいなと思っています。
採用・教育の枠を超えて、さらに大きな社会貢献を目指されるんですね。 すでに山本教授や藤吉教授もいらっしゃいますし、成長に意欲的な社員さんも多そうなので、遠からず実現しそうな気がします!
【関連リンク】
444株式会社:https://www.triple-four.com/
TechFUL:https://techful-programming.com/
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