1ヶ月で300万MAU!当初の開発は1人! マスクの通販最安値サイト「在庫速報.com」の開発秘話を最速インタビュー!
在庫速報.comをご存知でしょうか?
コロナウイルスが流行しはじめてすぐの3月中にリリースされ、現在では300万MAU(MAU=月間アクティブユーザ)と膨大なアクセスを集めている、マスクやアルコール消毒液などの通販最安値を確認できるサービスです。
実はこの「在庫速報.com」、本業は「ブラウザの開発」という、一見全く関係のなさそうな会社が開発していました。
ブラウザを開発している会社が、なぜ「在庫速報.com」を作ろうと思ったのか?
社長に業界初の、突撃インタビューです!
1人のメンバーが気づいた「ユーザペイン」
在庫速報.comって、コロナが本格化した頃にかなりのスピード感でリリースされましたよね?
3月の上旬にプロジェクトが立ち上がり、3月23日にリリースしました。
最初からここまでヒットすると思って作られたんですか?
それが全然違っていて。 構想段階の3月上旬って、自粛要請もそんなに出ていなくて、世間的にもコロナへの危機感がまだ薄かったんですよ。 店頭からマスクが減り始めているくらいで、僕自身もまだ危機感を強くは覚えていませんでした。
え、じゃあ開発のきっかけは何だったんですか?
社内にいた、感度の高いメンバーです。 彼がとにかくマスク不足を心配していて、ネットで探してみると、なかなか在庫が見つからないし、在庫があっても枚数や価格はバラバラで、1枚あたりの価格も分かりづらい。 どこで買えばお得か全然分からなかったんですよね。 買いたいマスクが見つかっても出荷日が全然先だったりもして…。 そこで「もしかして、みんな困っているんじゃないか」と気づきました。
そこで、これはサービスを開発して解決すべき課題ではないかと社内で話をしました。 当時はコロナがどれほど長引くかも見当がつかなかったですし、「翌週や翌月には終息してこのサービスが無駄になったらどうしよう…」とも考えましたが、「それはそれでナイストライだし、とにかくやってみよう」ということで、GOサインを出しました。
スマホブラウザ「Smooz」の開発・運営でリソースも限られているなかで、どうしてこのスピードでリリースできたんですか?
これは本当に偶然なんです(笑)。 弊社は四半期ごとに目標を立ててるんですが、1Q(1 - 3月)の目標を2月末くらいに達成しちゃって、開発リソースに余裕があったんですよね。 「今ならエンジニアを動かせるな」と思って開発に着手してみた、という感じです。
いざリリースしてみると、翌日にはアクセスが殺到。 メディアにも多く取り上げられ、早々に同時アクセスが1万や2万という数字になりました。 今では300万MAUと開発前に立てた目標の100倍以上のアクセスを獲得していますね。
300万MAU!? 100倍!?
圧倒的な上振れです。(笑) 下振れすることもありますが、こうやって「大当たり」か「大外れ」が極端なのが、C向けのプロダクトの面白いところですよね。
300万MAUってプロダクトとしてはかなりのヒットだと思います。 このように多くの方に使っていただけている理由って何だと思われますか?
やはりこのサービスが解決しようとしていた問題が非常に大きかったからだと思います。 誰もがマスクを必要としていたし、マスクを見つけるのは非常に難しかった。 この問題の大きさは正直僕たちの想定をはるかに上回るサイズのものでした。
また、適切なタイミングでサービスを提供することができたことも大きかったと思います。 スピード重視で開発を進め、3月末というタイミングでリリースできたからこそ、乾いた土に水をやった時のようにサービスが広がっていったのだと思います。
スピード感を出すには「価値と機能を絞ること」
開発にはどれぐらいの工数を割かれたんですか?
最初はブラウザ開発のバックエンドのエンジニア1人で作ってました。 途中からフロントエンドのエンジニアやデザイナーが入ったりしましたけど、前半はほぼ彼1人で開発を進めていました。
たった1人…? それでもこのスピード感でリリースできたのはなぜ…?
「このサービスで出来ること」を絞りに絞ったから。この1点に尽きます。 初めは「対象商品はマスクのみで、1枚あたりの金額が安い順に並ぶだけ」という機能だけでリリースしました。 実際にこの機能だけでも多くのユーザに利用いただけましたし、初期リリースには十分でしたね。
機能を追加するのは、コアバリューがユーザに受け入れられた後でいいんですよね。 元々開発していたブラウザアプリの初回リリース時には3つの機能を訴求したんですが、その分開発には半年もの時間がかかってしまいました。その反省もあって、とにかく訴求する価値を絞りました。 コアの機能以外は本当に時間をかけていなくて、デザインも簡素なものだったし、サービス名もある日の朝礼でサクッと決めましたね。
提供する価値と機能を絞る。よく言われることではありますが、徹底しているんですね。 コロナの影響もあり、構想からリリース、リリース後も含めてすべてリモートという点にも驚きました。 開発における意思疎通など苦労しませんでしたか?
リモートだから、という苦労はなかったですし、今もしていないですね。 3年あまりブラウザの機能改善を行っていく中で、チームの力を高めることができたいたということもあると思います。
弊社では週2回リリースをする速いサイクルで機能改善をしています。 これができるチームなので、「開発力」はもちろん、すべてのメンバーの「自走力」、カスタマーサポートを含めたチームの「実行力」が非常に高く、リモートでスピードが落ちるということもありません。 在庫速報.comも、ユーザの声も反映しながら速いスピードで改善を進めています。
ブラウザ開発の経験を経て強いチームになっているんですね…!
ユーザに愛されればマネタイズは見つかる
在庫速報.comの現状についてなんですが…マネタイズってどうされてますか? これだけアクセスを集めるとサーバー費用なども結構かかると思いますし…。
既にある程度の売上がありますし、継続的に運営できる見込みも立っています。 個人的にはマネタイズを最初に考えすぎるのって少し違うと思っていて。
どういうことですか?
たくさんのユーザに多く使ってもらえるサービスになれば、マネタイズの方法って必ず何かしら見つかるんですよね。 マネタイズのプランがまったくないのは問題ですが(笑)。 これまで作ってきたサービスでそれは実感していたので、在庫速報.comはユーザに利用してもらえるサービスになることにとにかくフォーカスしました。
優れたマネタイズ手段を考えるより、多くの人に使ってもらえるサービスを作る方がよっぽど難しいですよ。 マネタイズのプランが完璧でも、ユーザに使ってもらえなければ結局サービスは継続できません。 まずはユーザに向き合って、本当にいいサービスを提供することが大事ですよね。
在庫速報.comの今後の展望についても教えてください。 コロナが終息するとプロジェクトも終わるんでしょうか…?
いや全然やる気満々ですよ! 4月からの四半期ではさらにリソースを割いて注力していくつもり!
え!そうなんですね! マスクの需給も安定してくると思うんですが、それでもニーズはあるんでしょうか?
マスクや衛生用品の需要は引き続き高いですし、何より今後も「需要と供給は完全に均衡しない」という課題は残り続けると思っています。 ソフトウェアと違って、リアルの商品は生産設備を用意し、原料を調達し、生産して流通させる工程でどうしてもある程度のリードタイムがかかってしまうからです。
そんな時、ユーザーは様々な手段で商品を探し求めますが、情報が整理されておらず最適な購入場所が分かりづらい商品はまだまだ多いので、今後も取り扱う商品はどんどん増やしていきますよ。
どんな商品が追加されていくのか、今後の展開が楽しみだ…!
「殻を破ってくれた」新サービス開発
在庫速報.comを始めて良かったことはありますか?
技術的には、バックエンドはこれまで同様Railsを使っていますし、新しい取り組みはアプリ版をFlutterでクロスプラットフォーム開発したくらいですかね。 ただ技術面での経験以上に、在庫速報.comの成功が自分や会社の殻を破ってくれたことが本当に大きいですね。
殻を破る…?
うちってこれまで4年間ずっとSmooz一本でやっていて。 良くも悪くも「一つのプロダクトにこだわる」という美学に縛られていたんですよね。 Smoozのヒットという呪縛とも言えるかもしれないですが。
今回の在庫速報.comという新サービスの成功によって、この呪縛から解放されました。 僕もメンバーもSmooz以外のサービスを成功させられる自信がつきましたね。 これまでは新サービスを全然やってこなかったのですが、今後はどんどん新サービスにトライしたいですね。 「人間の能力を拡張する未来の道具を創る」というアスツールのビジョンを実現できるチームにより一層近づいたと感じています。
在庫速報.comの成功が会社が変わるきっかけになったんですね…! このコロナの状況下で、企業やエンジニア個人が取るべきアクションってなんでしょう?
まず、どの企業も世の中の課題を解決するために存在しており、エンジニアは技術の力で課題を解決したいという人が多いと思います。 そして、今まさに世の中で色々な課題が生まれ、顕在化した状況になっています。 目の前の事業や生活は守りつつ、ミッションと合う課題が見つかってリソースがあるのであれば、その課題の解決に取り組むべきではないかと思います。
もちろん、ボランティアとしてやるべきというわけではなく、シビアにビジネスチャンスとして見ればいいと思っています。 大きな転換点だし、サービスが不足している場所は多い。 ここで生まれたものが未来の大きなサービスになり得るでしょうし、積極的にトライしていきましょう!
在庫速報.comのこれまでとこれから、そしてアスツールの未来についても触れることができた貴重なインタビューでした。
次回はアスツールが提供しているブラウザ「Smooz」についてお話をお聞かせいただきます。
乞うご期待!
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