Twitterで愛らしい猫の動画が反響を呼び、猫カフェにはあまたの猫好きが通う昨今。
猫の人気はかなり高まってきているように感じます。
でも、いざ飼ってみると、「外出中や仕事中にうちの猫が何してるか気になってしまう…」「体調を崩しちゃったらどうしよう…」などと子煩悩ならぬ猫煩悩になってしまうかも。
実はその悩みはテクノロジーで解決できるんです。
そんな悩みを解決するデバイス「Catlog」を開発しているのが株式会社RABOです。
「世界中の猫と飼い主が、 1秒でも長く一緒にいられるように 猫の生活をテクノロジーで見守る。」をミッションに掲げて開発している「Catlog」の裏側はどうなっているのか。

今回は、株式会社RABOのPresident & CEO 伊豫愉芸子さんにお話を伺います!

伊豫 愉芸子(いよ ゆきこ):東京海洋大学大学院博士前期課程修了。東京大学大気海洋研究所 佐藤克文教授のもと、ペンギンやオオミズナギドリに小型センサーをつけ行動生態を調査するバイオロギング研究に従事。2018年2月22日の猫の日に、株式会社RABOを創業。猫様と20年以上一緒におり、ショートヘアソマリのブリ丸とベンガルのおでんと暮らしている。
※以下、猫は敬意を込めて「猫様」、エンジニアは「エンジニャー」と記載いたします。
「バイオロギング」と猫様のUXを考えたデザイン

アンドエンジニア編集部
そもそも、Catlogのベースとなっている技術はどのようなものなのでしょうか?

RABO 伊豫さん
「バイオロギング」という技術で、もともとは人間が目視できない海洋生物の生態行動の研究のために開発されたものです。
下の画像のように、動物に加速度センサーを取り付けて行動を記録します。

マッコウクジラにセンサーを取り付ける瞬間。バイオロギングには日本の研究者も大きく貢献しており、当該分野の初めての国際会議は日本で開催されたとか。(画像出典:
東京大学)

アンドエンジニア編集部
ペットに応用しようという動きはこれまでにあったのでしょうか?

RABO 伊豫さん
欧米ではこれまでもペット向けのウェアラブルデバイスは複数展開されており、一部は大手企業に買収されたり盛り上がりを見せています。

RABO 伊豫さん
ただ、GPSの入った犬向けのものしかなかったんです。
犬と猫様では生物としても全く違いますし、飼い主様のユースケースも違います。
このため、猫様専用という点を重視してCatlogを開発しています。

RABO 伊豫さん
Catlogでも一番努力しているのは小型化・軽量化の課題です。
猫様の負担にならないよう搭載するセンサーを限定し、10円玉2枚分まで軽量化しました。
センサーの役割が限られることによって、解析の難易度がバイオロギングの中でもかなり高い方になっていると思います。

写真の猫様はRABO CCO(Chief Cat Officer)のブリ丸氏。氏が着用しているのが首輪型デバイスの「Catlog」。2020年のグッドデザイン賞を受賞した。付けたくなるようなデザインを意識しているという。(画像出典:
公式HP)

アンドエンジニア編集部
猫様のUXも重視しているんですね。

RABO 伊豫さん
そうなんです。同様に「Catlog Board」も猫様の負担にならないように工夫しています。
今までの猫様用のIoTトイレは、トイレごと新しいものに替える必要があったり、電源確保のために置き場所が限定されたりするという課題があったんです。

こちらが「Catlog Board」。コードレスで、普段のトイレの下に敷くだけで使える。CCOのブリ丸氏も堂々たる佇まいである。(画像出典:
公式HP)

RABO 伊豫さん
猫様にとってトイレはとても大事な存在です。
砂の種類を変えただけでそこに排泄しなくなることもあるほど繊細なので、いつものトイレの下に敷くだけで使えるようにデザインしています。
「Catlog」と「Catlog Board」で猫様の健康を徹底管理!

アンドエンジニア編集部
Boardに「乗る」という行為の検知や、体重測定についてはイメージが付きやすいのですが、排泄行為はどのように検知できるのでしょうか?

RABO 伊豫さん
普段の猫様の傾向から平均値を割り出せるので、Boardから降りた後に残っている重量から推測して記録しています。

RABO 伊豫さん
個体差はあるものの、猫様ごとに大体決まった量で、尿と糞で識別可能なほど量が違います。
ですので、尿や糞の量に大きな変化が合った場合には、健康面に異常がある可能性を示唆することができます。

猫様の7匹に1匹が泌尿器系のトラブルを持っているという。CatlogとCatlog Boardを併用するとその予兆をいち早く察知できる。これで猫バカの皆様も安心だ。(画像出典:
Makuake)

アンドエンジニア編集部
「Catlog」で判定できる「歩く」「走る」「食べる」「眠る」「くつろぐ」「毛づくろい」「水を飲む」といった行動に加えて、「Catlog Board」も活用すると健康に関する情報や、異常行動をさらに検出できるようになるんですよね。

RABO 伊豫さん
そうですね。併用することで、体重や尿の量・排泄の時間や頻度といったデータも解析に利用できるようになります。
飼い主さんと獣医師さんの両方の視点からみても、猫様の健康管理で必要な情報はこれ以上ないと思います。
猫様の健康管理に関する情報はCatlogのサービスで完結することができるんです。
日々進化するプロダクトとプロダクトに直結した機械学習

アンドエンジニア編集部
先程、小型化と軽量化のお話をしましたが、特別なセンサーを使用しているわけではないのですか?

RABO 伊豫さん
搭載しているのは加速度センサーで、そこから取得できた3軸の加速度センサーの値をどのように解析するかがポイントです。
弊社では機械学習を利用して各行動を分析しています。

RABO 伊豫さん
猫様の行動は、動物行動学的には大きく分けて17種類あると言われていて、Catlogではその内7種類の行動を判別できています。
17種類全ての行動に加えて、嘔吐や痙攣のような異常行動も判別できるよう現在開発を進めています。

どういう行動を猫様がとっているかアプリからひと目で確認できる

アンドエンジニア編集部
そうした行動分類には実際のユーザーの方々から取得したデータが活用されているのでしょうか。

RABO 伊豫さん
また、飼い主様からのフィードバックを反映させてCatlogの精度を上げることのできる機能も実装済みです。
使う猫様が増えれば増えるほど、行動分類の精度が向上していきます。

アンドエンジニア編集部
猫様の個性を学ぶという説明も目にしたのですが、個別の猫様ごとのカスタマイズも今後実装予定なんでしょうか?

RABO 伊豫さん
実はすでに実装を始めていて、調整を続けています。
猫様にはすごく個性があって、例えば食事だと、食べ物・食べ方・食器・タイミングが猫様ごとに異なります。
こういったパラメーターの多い行動は、猫様ごとに学習して精度を上げていっています。

アンドエンジニア編集部
CatlogやCatlog Boardの裏には、最先端の技術があるんですね。
これらのセンサーから得られたデータを解析する上での面白さって何なんでしょうか?

RABO 伊豫さん
機械学習エンジニャーやプロダクト開発に興味のある方から見ると、弊社が一番特徴的で面白いのは、機械学習の精度がプロダクトの価値に直結している点だと思うんです。
機械学習の精度の高さによって実現される猫様の行動や健康の把握が、そのまま利用者の満足度・エンゲージメントやサービスの普及に直結するんです。

RABO 伊豫さん
機械学習がミッションの実現に直接影響を与えるプロダクトは他にはあまりないと思いますね。
未だ世界にない新しいプロダクト、Catlogで実現したい世界

アンドエンジニア編集部
今後の方向性やビジョンを教えていただけますか?

RABO 伊豫さん
「猫様と飼い主が1秒でも長く一緒にいられるように」というのが私達のビジョンです。
CatlogとCatlog Boardで取得したデータをそのためにどう解析していくかが大きなテーマになっていくと思います。


アンドエンジニア編集部
なるほど、データの解析が鍵なんですね。
ちなみに、RABOさんで働きたいエンジニャーには猫様への愛が必須要件なんでしょうか?

RABO 伊豫さん
猫様に限定しているわけではありませんが、「大切なものを大切にする」ことは重視しています。
猫様たちやその猫様を大切に思う飼い主様たちに利用していただくプロダクトなので。

RABO 伊豫さん
また、メンバーはプロダクト開発に長けたメンバーばかりなので、スキルに関してはかなりシビアです。
創立3年目のスタートアップ企業なので、自分自身の力で課題を発見して解決しながら進めていく力は重要だと思っています。

アンドエンジニア編集部
将来、RABOで働きたいエンジニャーの方向けに伝えたいメッセージがあれば教えて下さい。

RABO 伊豫さん
Catlogは現在、世の中にカテゴリすら存在しないプロダクトで、私達はその新しいカテゴリを作りにいっています。
バイオロギングという行動分類とプロダクト開発に長け、猫様と過ごした長い経験を持っているチームは今まで世界になかった全く新しいチームだと自負しています。

RABO 伊豫さん
プロダクトができて約1年しか経っていないにも関わらず、SNSではCatlogというプロダクトが少しずつ認知され始めていますし、機械学習という観点でも今までにない領域を切り拓くチャレンジングな取り組みを続けています。

RABO 伊豫さん
弊社は常にエンジニャーの募集はしているので、モノづくりや機械学習に興味がある方がいれば、お話させていただければと思っています。

採用情報– Catlog(キャトログ)に関する採用情報

アンドエンジニア編集部
本日はありがとうございました!